土砂災害特別警戒区域でも家は売れるのか?

土砂災害特別警戒区域に指定されているエリアは年々増加しています。

国土交通省が公開している「全国の土砂災害警戒区域等の指定状況推移」によると、平成15年では土砂災害特別警戒区域は全国でわずか116箇所でしたが、令和3年度末では約58万箇所と激増しており、土砂災害に関する警戒意識が高まっています。

また、昨年度より不動産売買契約時には土砂災害に関するハザードマップ有無について公開し、ハザードマップがある場合は図示説明する事が義務付けられるようになりました。

このことから土砂災害特別警戒区域内の土地売買について買主はより慎重に土地検討するようになり、結果的に売主にとって土地が売りにくい状況になっていると言えます。

 

この記事では土砂災害特別警戒区域の概要と、売却におけるメリットデメリットについて解説します。

 

土砂災害区域・特別警戒区域とは

国土交通省が公開している土砂災害防止法によると、土砂災害区域と土砂災害特別警戒区域は次のように定義されてます。

 

・土砂災害区域:急傾斜地の崩壊等が発生した場合に住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域を指定

 

・土砂災害特別警戒区域:土砂災害区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域を指定

(引用元:2.土砂災害防止法の概要

 

尚、各市町村が公表しているよく似た危険個所に土砂災害危険区域がありますが、土砂災害危険区域は法令制限がないのに対し、土砂災害区域及び特別警戒区域については建築物の制限などがあります。

違反した場合、罰則や原状回復命令など厳しい措置を行政から受ける場合があります。このように、急傾斜地の近くに住んでいる住民の生活や命をおびやかす地域に対し指定されるのが土砂災害区域となっており、その中でも建築物を損壊する恐れがある区域については特別警戒区域として指定される事になります。

 

特別警戒区域の調べ方

特別警戒区域は国土交通省が運営する、ハザードマップポータルサイトで調べることができます。(引用元:ハザードマップポータルサイト

左側にあるアイコンで「土砂災害」を選択し、場所を検索することで該当箇所が土砂災害区域及び土砂災害特別警戒区域に該当しているかどうかを調査することができます。

なお、警戒区域の見直しは毎年各市町村から依頼を受けた調査員が調査をしており、この調査は正当な理由なしに拒否する事はできません。そのため、保有している急傾斜地がいつの間にか警戒区域に指定されている事もあるため、土地所有者は定期的にチェックすることをオススメします。

 

特別警戒区域の物件を売却するメリット・デメリット

土砂災害特別警戒区域に指定されたからといって売却できなくなるわけではありませんが、メリットもデメリットもあります。

急傾斜地の土地所有者は以下記載のメリットデメリットを確認し、売却の検討をするようにしましょう。

メリット

近年の異常気象により、急傾斜地はいつ崩落してもおかしくないのが現状です。一度崩落した急傾斜地区は土砂の撤去に費用がかかり、近隣住民にも大きな影響が出てしまいます。

最悪の場合は家や命をおびやかす可能性もあり、近隣住民から損害賠償請求をされるケースもあります。

そのため、適切な管理、運用ができないのであれば売却してしまう事をオススメします。

デメリット

売却することで崩落による責任負担を回避する事ができますが、完全に責任を放棄する事はできません。

土砂災害特別警戒区域は明確に土地売買の規制がかけられており、所有権移転登記後においても適切な管理を怠ったが故に起きた事故については、前所有者となった立場でも責任追及されるケースもあります。

 

そのため、非常に危険な急傾斜地であっても住民に影響がない土地であれば、無理に売却せずそのまま所有する事で責任追及を免れる事ができます。

 

価格に及ぼす影響

土砂災害特別警戒区域に指定された場合、土地売却価格は大きく下落します。

その理由としては土砂崩れに関する心理的影響は勿論ありますが、最も大きな影響としては擁壁を造成する必要があるという点です。

(引用元:2.土砂災害防止法の概要

 

擁壁工事を行う事でガケ崩れのリスクをなくす事ができますが、擁壁の工事費が必要となります。場合によっては土地価格よりも擁壁工事費の方が高くなるケースもあり、買主の負担が非常に大きくなります。

そのため、土地所有者は土地を売るために価格を大きく下げる必要があります。

上にある図の赤丸で囲われたエリアは土砂災害警戒区域に該当しており、青丸で囲われたエリアは非該当です。

青丸エリアは近年坪20万前後で取引されているのに対し、赤丸エリアでは数年前に坪10万前後で取引があった以降は取引はありません。

このように、同じ団地内においても大きな価格差が発生してしまうのが、土砂災害特別警戒区域の指定になります。

 

まとめ

土砂災害特別警戒区域は土地所有者にとって保有したままにしておくのも売却するのにもリスクがあり、近年大きな問題になっています。

そのため、近隣住民に影響が出てしまう急傾斜地については家の移転の誘致や資金援助、擁壁設置の補助金などの支援が行政によって行われています。

 

災害が起きてしまう前に土砂災害特別警戒区域の土地について不動産会社に相談し、適切な管理、処分方法のアドバイスを貰うようにしましょう。

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